忘れられない言葉
タクシードライバーは仕事がら、色々なお客様から色々なお言葉をいただいています。
これはサービス業であるがゆえに声をかけていただいているのです。
その中でも忘れられない言葉が私にはあります。
流し営業をしているとある病院の前で若い青年が手をあげていました。
そしてその青年を乗せました。
彼は20代前半の若くてオシャレな方というイメージでとてもさわやかでした。
はじめは、天気の話など、他愛もない会話をしていましたが、だんだん私に慣れてきたのか、自分の事を話し始めました。
出身地が田舎ということや、大学を卒業して東京で就職したことなど、東京で生まれ育った私にとっては新鮮な話でした。
しかし、都会に慣れなかったり、就職した先の環境などのストレスから「うつ病」になってしまったと告白をしてきました。
今日はその病院帰りだったそうなのです。
私は外見からすると想像もつかなくびっくりしましたが、そのあとも話を聞いていました。
彼は友達に相談したそうなのですが、
「すこし休めば元気になるよ。」
「美味しいものを食べてのんびりすれば治るよ。」
「頑張りが少し足りないんじゃない?」
など、今の自分に言われるとなんだか辛くなることばかりでした。
彼は外見からすると若くてかっこよく今風な感じでしたので、悩んでいるようには見えないのです。
そこは一番驚きました。
そんな彼をなんとか励ましたいなぁと思うようになりました。
しかし、どのような言葉をかけていいのか、何を言ってはいけないのかわからずに・・・
「頑張るっていっても気持ちが付いていかないとね」
「こんな気分の時にご飯なんて食べれないですよね」
「そんに苦しい思いをなさっているんですね」
というような、彼の話を受け止めて、聞いてあげることしかできませんでした。
目的地に着いて何か言ってあげなきゃな~と思っていると
彼から「話を聞いてもらえてよかったです。本当にありがとうございます。お話できてよかったです。なんかごめんなさい。」
と頑張って笑顔でタクシーを降りていかれました。
今までたくさんの「ありがとう」という言葉をもらって、感じることがたくさんあります。
しかし、彼から言われた「ありがとう」は今でもときどき思い出してしまいます。
なぜかいつまでも忘れることができません。
私たちは人のためになる、手助けをする、役に立つという行為を「サービス」だと思っています。
サービス業とはなんなのか考えさせられます。