待っていてくださったお客様


ある日、会社近くの駅へお客様を降ろした時のことです。

空車になったのを見計らったかのように、私のタクシーへ向かって、ひとりの男性が近づいてきました。
その男性は私のところまで来ると、なにか紙に書いてこちらに渡してきました。
「ここでタクシーを待っていました。隣町のスーパーまでお願いします」

どうやらこのお客様は、耳が不自由な方でした。
視覚障害の方は、電話をかけてタクシーを呼ぶことができないでいました。
だからこの男性は、この場所で来るであろうタクシーをたたずんで待っていたのです。
しかし、この場所は駅の近くであるため、おそらく他社のタクシーが何台も通り過ぎたかと思いました。
いや、そうに違いありません。
しかも、近くにはタクシー乗り場もあったため、その思いが余計に強くなってきました。
にもかかわらず、弊社のタクシーを選んで待っていてくださったのです。

心の底から感動してしまいました。
また、私たちの会社のタクシーがこれほどまでに必要とされているのかと思うと、感謝の気持ちがこみ上げてきました。
私はとても気分が高揚し、

「待っていてくださったのですね!ありがとうございます!」

と思わずお客様の用紙をお借りして、私は書き記してしまいました。
長く待っていて疲れていたことと思いますが、いやな顔をいっさいせずに、微笑んで会釈してくださいました。
もしかしたら、視覚に障害があるので他社のタクシー会社で嫌な経験があったのかもしれません。
しかし障害があっても、私たちのタクシーなら、ここのドライバーであれば、何の心配もなく嫌な事もなく乗車することができる。
と思って選んでくれていたのかもしれません。

あらためてわたしたちの職業のあり方や使命、会社の看板を背負ってタクシーの乗務員をやっているという責任を強く感じることができました。
お客様が降りるときに、私は自分の携帯アドレスを記入して名刺をお渡ししました。
そして、「いつでもご連絡ください!」とメッセージもつけました。

名刺を受け取ったお客様は、とてもうれしそうにお辞儀をしてくださり、笑顔で答えてくれました。
名刺を大事にお財布にしまいこみ、満足をした顔をして目的地へ向かわれました。

わざわざお待ちいただいたうえに、満面の笑顔で降車いただき、とても感動しました。
このようなお客様と巡り合えてとても幸せですし、仕事の糧になると実感しました。
人のために役立つとういう意味で、これからも邁進していきたいと思っています。

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