夢と希望の介護タクシー


介護タクシーのサービスを本格的にはじめた頃の話です。

今では一般的になっている介護タクシーですが、当時はあまり馴染みもなくどのようなものかと思われていたかと思います。
弊社では、訪問介護サービスと居宅介護支援サービスがございます。
主に要介護者さんの移送を行っています。

ある朝1本の電話が入りました。
「母にお花見をさせてあげたいんですけど、どこかに連れてっていただけますか?」
というような内容でした。確かに桜が咲き始めた3月下旬でした。
詳しく伺ってみると、寝たきりになってしまった高齢者の母親を持つ娘さんからのお電話でした。
そのお母さんが突然「桜の花が見たい」と言い出したそうです。
桜の季節になりますが、病院から桜の木が見えるところがなく、見たいと思ったのでしょう。

お母さんは入院しており、寝たきりでストレッチャーのままでないと移動ができない身体なので、そんなことができるのか・・・と悩んでいたそうです。
それに、病院の近くには桜の木がなく、距離もあるなぁと思っていました。

しかし、お母さんは何度も何度も「見たい」と言っていたそうだったので、真剣に桜を見に行く手段を考え始めました。

そんなことを病院の先生に相談したところ、「介護タクシーの会社だったらお願いできるかもしれない。」ということで、弊社のことを教えてもらったということでした。

経緯を聞き、「もちろんお手伝いさせていただきます。」と答えました。

介護タクシーベテランの担当者へお願いすることにしました。
この方は介護タクシーの指名も一番多く、クレームも無く、良いことしかお客様からの声として聴いたことがありませんでした。

隣町に川沿いに桜並木が続いている場所があったので、そちらにご案内すると言っていました。

ご案内当日は、天気も良く桜の花も開花宣言してから3日経過したあとで、ほぼ満開に近い状態でした。
最高のお花見日和です。

タクシーに乗せて、隣町まで出発し、無事に桜並木へ到着しました。
到着して桜の木を見たお母さんはすでに感動をしていました。

乗務員がお母さんをストレッチャーに乗せたまま、木の近くまで向かっていきました。
近くで桜を見れたことでより感激をして、涙を流していました。
「こんな素晴らしい景色を見れて、まだ生きていてよかった。」
とおっしゃっていました。
それから「運転手さん本当にありがとう。」

この言葉に乗務員も、同行した娘さんも涙が溢れ出てきてしばらく止まらなかったそうです。

サブコンテンツ

タクシードライバーのコラム集

このページの先頭へ